fiddling, writing

へっぽこフィドル弾きceadの落書き帖です。

Since 2008.01.11, Last updated on 2010.07.22

以前から持ち運びが楽な、手ごろのサイズのものはないものかと探していまして、目に留まったものを思わず買ってしまいました。かわいいと、なかなか好評であります。


冗談みたいなフィドルですがポシェット(pochette)は創作楽器ではなく、れっきとした古楽器です。きちんとは調べていませんが、どうも16世紀には存在していたようです。ということはフィドル/バイオリンの派生物というよりは、兄弟分にあたるのでしょうか。私のものはもちろんコピー物ですが、例えば18世紀に製作された「本物」がScotlandの博物館に陳列されていたりします。

pochetteの他にもkit、travel fiddle、dance master fiddleなどいろんな呼び方(ニックネーム含む?)があるようで、なんと呼んだものかちょっと悩ましいです。WikipediaではKit Violinとして項目がたってますね。この呼び方はここで初めて見ました。いったいどの呼び方がとおりがいいんでしょうか? そもそもとおりのいい呼び方ってあるんでしょうか?

pochette、dance master fiddleといった名のとおりポケットサイズのフィドルで、旅回りの楽師やダンス教師が使っていました。スコティッシュ・フィドルの偉人Niel Gowやアメリカ独立宣言を起草し、第3代大統領になったThomas Jeffersonもこのタイプのフィドルを弾いていたそうです。

さて、私のポシェットの話です。

どこから突っ込んでいいか迷うぐらいいい加減な作りですが、意外に鳴ります。とても "バイオリン" の音とは思えない音色ですが、これはこれで温かみがあってありです。そうと分かるといい加減な作りも味だと思えてくるので不思議ですね。イタリアン・バイオリンみたいな見事なニスが塗られていても変ですし、むしろこれぐらいの安っぽさでちょうどいいかもしれません。

マニアックな楽器の悲しさ、カタログだけで購入したため、実物が届いて初めて気づいたことがいろいろあります。

テールピースは分数サイズ(たぶん3/4?)で、エンドピンから駒までの距離が近く、右手はやや窮屈です。表板のアーチがないためボディのエッジから駒の頂点までの高低差が少なくなっていますので、弦長を確保するために駒の位置をエンドピン寄りにせざるを得なかった、ということだと思います。音量と、普通のフィドルとの持ち替えに配慮したのでしょう。それでも有効弦長がやや短いのか、左手の指のポジションは狭めです。

横幅がないため楽器が不安定で、慣れるまで苦労しそうです。気をつけていないとボウイングに引っ張られて楽器がひっくり返りそうになりますし、移弦するときには普通のフィドルより大げさに左手をさばかないと弦を押さえられません(圧力の向きがずれてしまって楽器を落っことしそうになります)。いや、たぶん不安定なのではなく、普通のフィドルと同じ考え方で楽器を保持しようとすること自体が間違いなんでしょう。

多少危惧していたものの悪い意味で予想以上だったのは、表板の強度のなさです。アーチがないため圧力に弱く、すでにわずかながら内部に向けて凹んでいます。いずれ表板の交換が必要になりそうです。フィドルの表板を作るより簡単そうですが、イレギュラーな形なので断られたり、工賃が大幅に割り増しになったりするかもしれませんね。いっそ工房ではなく、木工が得意な楽器マニアに頼んだほうがいいかもしれません。

よい方向に予想以上だったのは、持ち運びの楽さです。なんのかんの言ってケースは弓の長さに制約されますので、ケースの長さは普通のフィドルとさほど変わりません。が、細くなっただけでもこんなに楽なのか、と驚きました。軽いのもありがたいです。一式で1kgを切ってるんじゃないでしょうか。例えば平日に仕事カバンと一緒に持ち歩くなど、荷物の多いときはポシェットがメインになりそうです。

ポシェットのことは現物が届くまで内緒にしていたのですが、「新しいおもちゃが届いたんですよ」と口にした途端に「ポシェットでも買ったんですか?」と切り替えしてきた人がいました。私、そんなに分かりやすいですか?

音源 etc.

Niel Gow Replication Pochette Fiddle
私が購入したポシェットの販売元が公開しているデモ演奏です(微妙にモデルチェンジしているみたいですが)。奇妙な構え方ですが、これが一般的なスタイルです。私も挑戦してみましたが、全然無理でした。

Darci Jones Playing Neil Gow Pochette
こちらもデモ演奏。鎖骨に乗せて顎を添える、普通のスタイルで弾いています。私も同じスタイルで弾いていますが、テールピースに顎が触れて音量が小さくなってしまうので、超ミニサイズの顎当てを付けました。

Darci Jones Playing Tobin's Jig on Neil Gow Pochette
ひとつ上の動画と同じフィドラーの、ダンス・チューンのデモ演奏です。

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