pochette(kit、dance master fiddle、etc.)は呼び名もいろいろですが、作りもいろいろです。スタンダードが確立されておらず製作者の考えひとつでやりたい放題、というのはニッチな楽器の醍醐味だと思います。ということで、下調べ中などに見つけたネタをご紹介します。気に入ったものがあれば、おひとついかがでしょう?
アイリッシュなぞやっていますと楽器仲間もマニアックな層が多くなりまして、pochetteを知っている人もたくさんいます。が、知っている人でも私のpochetteを見ると「あれ? こんなんでしたっけ?」という反応がけっこうあります。博物館や図鑑等でよく見かけるのはもっとボディが小さいものが多いんですよね。個人的経験からの印象論で、裏づけはないですが。
例えばこういうの(例1、例2)はときどき "バイオリン屋さん" でも扱っていまして、図鑑等の書籍で紹介されてるのはたいていこのタイプです。ボディが小さすぎますし細工もずいぶんお上品なので、実用品というよりはアクセサリ的に作られたものじゃないかという気がしますが・・・実際のところどうなんでしょうね。
このタイプのものは私が持ってるのとは、見た目・サイズだけでなく構造が異なります。私のは普通のフィドル同様表板・側板・裏板を張り合わせてボディを作りますが、こちらは一本の角材から削り出したボディに表板で蓋をします。そういう作りなんで、多分魂柱もないんじゃないでしょうか(表板の振動を裏板に伝えるためのものなので、ボールバックのだと意味がないかと)。
case caneと呼ばれる仕込み杖みたいなモデルもあります。これもこれで面白いですが、やはりボディが小さすぎますし、弾いて気持ちいいものではないような・・・。弓を中に収納するので、これも魂柱はないでしょう。
中世フィドル風のものが売られているのも見つけました。case caneと同じような発想で、弓を中に収納できます。
意外なことにストラディバリウスのポシェットもあります。古楽器を扱っているお店がレプリカを作っていました。バイオリン風でかなり面白いです。音源も公開されていますが、やはり音もバイオリン風。
当然、昔作られたもののレプリカではなく、オリジナルの工夫を凝らす人もいます。 Adventurous Museというアメリカの業者が、顎当て・肩当てを付けられるようにしたものや、さらに携帯性を追求したものなど面白いモデルを扱っています。
また、びっくりするほどコンパクトなwipLstixというモデルを扱っている業者もあります。youtubeに自分の演奏をアップしている人がいますが、にわかには信じられないぐらいよく鳴っています。Who's Using wipLstix?というページもぜひごらんください。楽しい写真・メッセージがたくさん載っています。
ここまで読んでみて「自分でも作れるんじゃないか?」と思った方、けっこういらっしゃると思います。木工が得意な人なら普通のフィドルよりはずっと簡単に作れると思います。例えばこの人は「バイオリン製作について3時間勉強して作っちゃいました!」と得意げに動画を公開しています。日本でも趣味で木工をやってる人が自作してウェブページに写真を載せたりしていますので、興味のある方は探してみてください。楽器がぐっと身近に感じられ、わくわくする時間を過ごせること、うけあいです。
以下、大きく脱線します。
どうも日本人には、"バイオリン"というのは特別な才能と家庭環境を与えられた人だけが弾く楽器だ、というイメージが刷り込まれてしまっていると感じることがしょっちゅうあります。"プロの音楽家として身を立てることが大変"だということが、楽器を弾くこと自体の難しさと短絡してしまっているのでしょう。
ここで紹介したpochette(あるいはkit、dance master fiddle、etc.)は本質的には"バイオリン"と同じ楽器です。でも、こういう外観ならなんだか気軽に手を出せる、簡単に弾けるような気がしてこないでしょうか? 一度は歴史の舞台から消えてしまったニッチな楽器ですが、現代版pochetteの認知度が高まれば、"趣味の音楽"の裾野がぐっと広がるんじゃないか、フィドルケースをぶらさげてるだけで"住んでる世界の違う人"という偏見をもたれなくなるんじゃないか、などと楽しく妄想する次第です。
携帯が容易で音量が小さめというのも日本の生活事情にばっちり合うはずなので、ウケるとすればまず日本じゃないか、とも思うんですよね。ちょっとずつでも、楽器店に並ばないものでしょうか。
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