ハーディングフェーレが届いて1週間経ちました。こちらにコメントを残してくれた人たちに代表されるマニアックなフィドル弾きのみなさんは、そろそろ実物に触れた感想等、詳しい話を読みたいのではないかと思いますが、その前に注文から楽器を手に取るまでのエピソードを、写真を添えてをネタにしたいと思います。
実物を手にも取らず、音も聴かず、メールでのやり取りだけですますという無茶苦茶な買い方をしましたので、参考にはならないと思います。むしろ参考にするとまずいでしょう。その点はご注意ください。
■5月後半:情報収集
以前から暇つぶしがてらハーディングフェーレについて調べていましたが、購入に向けて本気で情報収集を始めたのはこの時期です。日本語の情報が全然ないのははじめから分かっていましたが、英語の情報も少なくてなかなか思うようにいきませんでした。最後は「失敗したら美術品を買ったと思おう」ということで勢いに任せて見切り発車です。
何人かの友人から何がきっかけで欲しい欲しいと言うだけで我慢できず、購入に踏み切ったのかときかれました。細かい要因の積み重ねなのでなかなかこれが決め手と言えいないのですが・・・強いて一つ選べば、「そこにハーディングフェーレという楽器があるから」です。変わった楽器に思わず手を出してしまうタイプの人間でなければ、そもそもバイオリンではなくフィドルをやりたい、なんて思わないんじゃないでしょうか。
ハーディングフェーレを作っている工房はいろいろ見つかったのですが、Wulffenstejn Hardanger Fiddle & Mandolin WorksのBevan Wullfensteinにコンタクトをとってみることにしました。Bevanの工房を選んだのはウェブサイトの作りが一番しっかりしていて、情報が豊富かつしっかり整理されていたからです。私が見つけた工房の中で、ハーディングフェーレという楽器の紹介や過去の作品、製作や補修の費用、調弦の仕方など、最低限知っておきたい情報をウェブサイトに書いてくれていたのは彼の工房ぐらいでした。
楽器をどこから買うのか、ウェブサイトの作りで選ぶのはナンセンスかもしれません。でも、プロの演奏家ならともかく、趣味でフィドルを弾いているだけのアマチュアが外国の工房に直接出向いて相談するなんてできるわけがありません。直接工房に出向かずオンラインで買うという前提がある以上、オンラインでコンタクトをとってくる顧客に対してきちんとした入り口を用意してくれている工房を選ぶのは合理的なことだと私は思います。
「楽器のできが気に入らなければ代金は全額払い戻す」とウェブサイトに明記されていたこと、Hardanger Fiddle Association of America(全米ハーディングフェーレ協会)のウェブサイトでも紹介されていることも判断材料になりました。
■2008/06/05:最初の問い合わせ
Wulffenstejn Hardanger Fiddle & Mandolin Worksの職人Bevan Wulffensteinに最初の問い合わせをしました。きいてみたのは
- 国外からの注文を受け付けているか。
- 工房を訪ねることができないが、パターン・オーダーのような形で注文することはできるか。
の2点です。
翌日、どちらも普段からよくあるので何の問題もないという返信がきました。ちょうど3本を製作中で、うち1本は買い手が決まっておらずフリーだとのこと。
とりあえず空いている1本を押さえてもらい、製作中の楽器の写真と装飾の図案のサンプルを送ってもらうことになりました。
中央のハーディングフェーレが私がリザーブしたものです。図案のサンプルは障りがありそうなので割愛します。
ちなみに買い手が決まっているものの片方は、大阪の顧客からの注文でした。もちろん誰なのかは分かりませんが、私のハーディングフェーレの兄弟を使っている人が同じ地域に住んでいるというのは不思議な気分です。
■2008/06/08:装飾決定
工房のウェブサイトの壁紙のコーナーにこんなハーディングフェーレがあるのを見つけて同じものを作れないかときいてみたものの、ある顧客が自分でデザインした1点もので、同じものを作ることはできないとのことでした。残念。
ということで、送ってもらったサンプルからinlay(指板とテールピースの象嵌)とrosing(表板、裏板の装飾)の図案を選びました。inlayは4つのサンプルから、rosingは5つのサンプルからの選択です。絵心があれば自分でデザインしたいところですし、対面で相談できればいろいろ細かいところまで凝れたのでしょうが、ここは割り切って単純に「○○番でお願いします」とだけ指定しました。
■2008/06/19:rosing完成
Bevanからrosingが完成したというメールが来ました。
■2008/06/29:inlay製作中
Bevanから指板にinlayを埋め込む溝を彫り終わったというメールが来ました・・・いやいや、注文した図案と違うし。
慌てて「こっちの図案を頼んだつもりなんだけど」とメールすると、「もちろんそのとおりですね。すぐに作り直します」と爽やかな返信が。けっこううっかりさんのようです。もっとも、私が注文したのはかなり珍しい図案で(ウェブにあがっている写真では同じものを見たことがありません。Bevanもオプションとしては用意していたものの、実際に作ったことはほとんどないそうです)、Bevanが間違えて彫ったのがスタンダード。取り違えてしまっても仕方がないかもしれません。
このあと、埋め込む貝殻の色について相談していたのですが、お互いに相手が言いたいことがなかなか分からず、とんちんかんなやり取りが続きました。8割方、私の英語力が原因です。辛抱強く付きあってくれたBevanに感謝です。
■2008/07/06:inlay再製作中
指板の模様を彫り直したとのことで、写真が届きました。色についてのやり取りに不安があったのか、inlayに使う貝殻も一緒に写してくれています。蔓の部分は白い真珠母、花の部分は金色の真珠母。指定どおりで、お互い一安心です。
■2008/07/15:inlay完成
指板とテールピースのinlayが完成しました。
■2008/07/29:ハーディングフェーレ完成
7/25に「明日中に最終調整を終えて息子に試奏してもらいます」という連絡があった後音沙汰なしだったため、こちらから連絡をとってみました。すると10分後に「連絡してくれてありがとう!」とアツい返信が。なんと前回の連絡の直後にPCのハードディスクがクラッシュし、こちらの連絡先が分からなくなってしまって困っていたということでした。
息子さんが試奏した結果「親父の最高傑作」と太鼓判を押してもらったとのこと。なんとBevanの息子さんはプロのハーディングフェーレ奏者で、2回も州のチャンピオンに輝いている凄腕。本場ヨーロッパへの演奏旅行も敢行しているとか。なんで息子さんに試奏してもらうのか不思議だったのですが、謎が解けました。褒め言葉が大げさなアメリカ人のこと、毎回最高傑作だと言ってる気もしますが、楽器が届くのが楽しみになってきました。
完成の報告をもらった後、支払い方法について相談してハーディングフェーレを発送してもらいました。当初予定していたPaypalでは全額が送金できないことが分かり、急遽銀行窓口で海外送金することになって手間取りましたが、Bevan側でもいろいろ調べてくれたり、親身に対応してくれました。Bevanが運送会社(UPS)と交渉して送料を$150も値切ってくれたのはありがたかったです。そうそう、PDFファイルで届いた請求書に「ceadさんのための特製フィドルです」と日本語で書かれていたのもぐっときました。
予定外だったのは送料以外に掛け捨ての保険が必要になったこと。バカにならない金額でしたが、保険なしで輸送してもらう度胸もなし。まあ仕方ありませんね。
■2008/08/09:ハーディングフェーレ到着!
ハーディングフェーレが届いた当日は練習会の日で1日留守にしていたのですが、マンションの管理人さんが預かってくれていました。4時間ばかりフィドルを弾き倒しての帰宅でしたが、もちろん即開封して弾いてみました。
音色がフィドルと全然違いますし、そもそも他のハーディングフェーレを弾いたことがないのでできの良し悪しは正直分かりません。でもフィドルと共通のポイントをチェックすると、各弦はバランスよく鳴りますし音のツボも分かりやすいです。また音に関係がなく傍目には分かりにくい部分で手抜きっぽいところもあるものの、全体に丁寧に仕上げられた 美しい楽器です。1本1本手作りされていること、他の工房と比べると破格に安いことを考えると、満足していい買い物だったのではないかと思います。

















コメント
☆質問→了解しました♪
購入の動機→「そこに◯◯があるからだ」まるで某有名登山家のようですね(笑)さすが 初登頂物(パイオニア)です♪ では 小生も 太平洋の向こうから お買い物…… …英語がワカラナイから無理かな(泣) やっぱり自分で作るかァ 写真で見ているかぎり 違いは 象嵌とネックから上ぐらいしか 見当りませんネ ボデェの中はどうなっているのかなァ~
えっと…ところで募金箱は準備しましたか?(笑)♪